2008/5/21

mudan tensai genkin desu -yuki

怖い怖い絶対怖い! 未来なんてありえない!

その日布団を被って寝た私は、何だかちゃんと寝た気がしなくて翌朝もぼんやりとしていた。
それでも惰性で支度して学校に行けちゃうんだから身に染み付いた習慣って恐ろしい。
私はいつも通り半分ぼんやりと教科書を眺めながら午前中の授業を終えることができた。
お昼の時間、友達の美菜子が机を寄せてくる。
「フユ、何だかぼけーっとしてない? いつもしてるけど」
「自己完結しつつ、ひどいこと言わない」
「でも目の下、うっすら隈できてるよ?」
「ほんとっ!?」
私は慌てて美菜子の差し出す手鏡を受け取った。
ほ、ほんとだ……。うっすら黒い。人相が悪い。
隈は一度でちゃうと消えるまで時間がかかるのに最悪です。私は机の上につっぷした。
「あああ……昨日怖いことあってさ」
「なになに? 変質者にでも追いかけられた?」
「追いつかれない自信はあるっ」
「相手が自転車乗ってたらどうすんの。最近出るみたいよー」
とまるでお化けのように美菜子が言うので、私は「へぇ」とも「ほう」ともつかない間抜けな相槌を打ってしまった。
自転車乗ってるお化けを想像してしまった。どうやってペダル漕いでるんだ。
どんどん脱線しそうな話を戻す為に、私は携帯を開いて昨日のメールを出すと、それを美菜子に渡した。
彼女はディスプレイを覗き込んで……何故か自分の携帯を取り出す。
「何するの?」
「え? ブログはじめたんでしょ。お気に入りにいれようと思って」
「違う違う。そうじゃなくって。それ私が書いたんじゃないの」
「でもフユのメールじゃん」
「そうなんだけど色々ちがって……」
混線する話を解きほぐして事情を説明するのに、お弁当箱が空になるまでくらいの時間が必要だった。
挙句の果てに「エイプリルフールは終わってるよ」と言われた。私じゃないって言ってるんですが。
それでも事態を把握してくれたらしい美菜子は……結局アドレスを自分の携帯に写し取っている。
「何してんの」
「うん。未来日記とやらを見てみようかと思って」
「見るの!? 呪われるよ!?」
「無理矢理怖い話にしない。だって気になるじゃん」
美菜子はそう言うと携帯からネットに繋ぐ。おお、勇気あるな。私も横から覗き込んだ。
私たちは携帯が問題のブログにアクセスするのを息を呑んで見守る。
「…………あれ?」
「何これ。エラーじゃない。存在しないページだって」
「うそおおおおおおおおおおおおお! 昨日はあったもん!」
「だってアドレス間違ってないでしょ」
言われて私は自分の携帯メールと、美菜子の携帯のURLを見比べる。お、同じだ……何でだろう。
拍子抜けする私に美菜子は笑ってみせる。
「というわけで、気にしないのが一番じゃない?
 それよりも大事な話!」
「何?」
「また借りてたCD忘れちゃった」
「…………」

結局あのブログは何だったのか。私は悩みながら帰った。
といっても全力で悩んでいたのではなく、電車を待つ間メールしたり本読んだりしながら、残りの10%くらいで悩んでいたんだけど。
できたばかりの彼氏にメールを送ってしまうと私はちょうど来た電車に乗り込む。
彼氏は同い年で別の駅にある別の高校の人。ナンパされて2-3回会って告白されたんだけど、格好いいんだよね!
男子校だから安心だけど、うちみたいに共学だったら気が気じゃないだろうなー。
その分週末くらいにしか会えないんだけど、まだ付き合いはじめだしメールで充分幸せ。
彼へのメールにもあのブログについて話そうかどうか迷ったけど、結局やめておいた。だって「存在しないページ」なんだもん。
あれだけ怖がっていたのに不思議なほどすっきりした気分で家に帰った私は、パソコンをつけてネットを見るためにブラウザを立ち上げる。
一通り友達のブログやBBSを見終わって……最後になんとなく、ほんとーうになんとなく、魔がさして、履歴にあったあのブログを開いてみた。

うん、結論から言うとね。
あった。
あった。しかも記事が増えてた。今日の日付で。
そこに書かれていたのは何て事のない大学生の日常。
なんだけどそれだけじゃなくって……
その記事には携帯で撮ったらしき写真が貼られていて、それはあるアクセサリの写真だった。
お世辞にも上手いとは言えないブレブレの写真なんだけど、私にはよくわかる。
細い金の針金みたいなものでできた、指輪とブレスレットが繋がったアクセサリ。
指輪にもブレスレットにも珊瑚みたいな石がはまっていて可愛いんだ。私がお母さんから貰ったんだけど。
でもね、写真ではそのアクセサリのブレスレットの方に石がなかった。
で、写真の下に「壊れちゃった (ノ_・。)」って書いてあったんだ。

………

ちょっとおおおおおおおおお!! 何で壊れてんの!?
私は慌てて机の引き出しを探る。
いつも通りの場所にしまわれていたブレスレットには確かに石がはまったままで……

だから私はこの日もよく、眠れなかった。