小さな配偶者

mudan tensai genkin desu -yuki

俺の友人は、あまり友人らしい付き合いっていうのをしてくれない。
大体のことが事後報告だし。結婚した時でさえそうだったもんな! 
俺がそのことについて不平を洩らすと「そんなこと知りたかったのか」みたいな顔するし。
別に普通の付き合いがどうしてもしたいわけじゃないからいいんだが。たまには俺のことも思い出して欲しいです。
―――― こんなになってから教えてくれる前にな!

「こんにちは、お久しぶりです」
小さな頭を下げてあの子はそう言った。
俺は「こんにちは」と返したが、視線は自然と下の方に吸い寄せられる。
それ以上何か言う前に隣にいたエリクをつつきたくなったが、それは仕方ないことだろう。
お前、嫁さんが妊娠してるなら俺が「遊びに行く」って言った時に教えてくれよ! お祝いとか持ってきただろ!
あの子は俺の吃驚した顔に気付いたのか、「あと三ヶ月くらいです」と大きなお腹を撫でて笑った。
そのまま厨房に彼女が消えると、俺はエリクに囁く。
「二人目出来てたなら教えてくれよ」
「あれ、言わなかった? うん。出来たよ」
「遅い……」
一人目が出来た時は、それ自体に驚いた人間も多かったらしいが、俺は別にそのことは不思議に思わなかった。
この二人が仲いいってのは知ってたしな。エリクは嫁さん大事にしてるし。
でも、久しぶりに友達の家訪ねて嫁さんの腹が大きかったら驚くわ。
だから最近彼女を宮廷内で見かけないのか。してやられた。

俺が手土産の菓子を出している間に、エリクは厨房へと向かうとお茶の盆を持って帰ってきた。
多分嫁さんから受け取ってきたんだろう。あの子はエリクの後について手ぶらで戻ってくると「ごゆっくり」と一礼して出て行く。
上の子はお昼寝か何かか? ともかく二人きりになると俺は出されたお茶を啜った。
「しかしあの子、顔変わらないな。今いくつだっけ?」
「二十五くらいのはず」
「十五で通るぞ」
一体どうなってるんだ。あれは体質なのか? 娘もそうなるのか?
俺がしきりに首を捻ってると、あいつは「確かに出会った頃からあんまり変わらないね」と答えた。
あ、それは分かってるのか。分かってなかったらどうしようかと思った。
俺はもう一つの忠告を口にしようか迷う。
「……お前、今のあの子と城都歩いたりしてないだろうな」
「城都自体彼女はほとんど行かないよ。時々キスクの宮廷には行ってるみたいだけど」
「ならいいけど」
この町の中だけならいいけどな! 人の多いところで一緒に歩いてたらお前、犯罪者に見られかねないぞ!
もっともそれで城に密告されたとしても、陛下が笑い転げられるだけなのは目に見えてるんだけど。

俺は黙ってお茶を啜ると、夕食の時間になる前にエリクの家を辞した。
本当は夜まで酒でも飲んでくつもりだったけど、さすがにそれは出来ない。
後日祝いの品を届けたところ、あの子からは丁寧な礼状が届いた。
言葉すっかり流暢になったんだな。なんかしみじみした。いい子が生まれるといいな。