曖昧な過程

mudan tensai genkin desu -yuki

「とうさまは、どうしてかあさまと、むすばれたの?」
その日の父娘の会話は、そんな他愛無い問いから始まった。
ラルスは膝に抱いた五歳の娘を覗き込む。
親同士が結婚していないだけではなく、違う国の王同士である―――― これが変わったことであると最近気付いたらしいエウドラは、純粋な疑問だけではなく期待の目でも父親を見上げていた。

―――― 父として、この期待を無視は出来ない。
そんなことを思ったのか思ってないのかは分からないが、ラルスは「よし」と前置いて話を始める。
「そうだな。オルティアがまだ小さかった頃の話だ」
「かあさま、ちいさかったの?」
「身長がな。今も小さいけど」
本人が聞けば怒り出しそうな出だしから、王の昔話は語られていく。
「で、オルティアはどうやら俺に構って欲しいらしくてな。よく俺のところに刺客を送ってきてたんだ」
「とうさま、しかくって何?」
「伝言を肉体言語で配達する人間のことだなー。
 で、そいつらがあんまり頻繁に来るから俺はオルティアの思いを充分に受け取ることが出来た」
習っていない単語は分からぬエウドラは、わくわくと目を輝かせた。
話の続きをねだる娘の頭をラルスは撫でる。
「俺はだから、お返しに人をいっぱい連れてキスクを訪ねた。
 オルティアと運良く外で鉢合わせた時、あいつは熱い(殺意の)視線で俺を見てきたんだぞー」
「すてきね! とうさま!」
「そうだろー?」
エウドラについてきたニケは、壁際で沈黙を保っている。
ここで何か反応をしたら負ける気がした。
嘘と真実の間を話は進んでいく。
「でもその頃オルティアはもうキスクの女王だったから、キスクからは離れられないわけだ。
 だからせめて、子供だけでも作ろうということでお前たちが生まれたんだぞー」
「どうやってつくるの?」
「それはな」
もうこの辺りが限界だろう、とニケは判断した。仲睦まじい父娘に頭を下げると「お時間ですので」とエウドラを引き取る。

色々聞けて嬉しかったのか、機嫌のよいキスク王女は国に戻るとその話を母親へと伝えた。
後日ファルサスの王の私室には山のように人参が流し込まれたらしい。