輝かしいほどの食卓

mudan tensai genkin desu -yuki

目の前のテーブルには、輝くばかりの料理の数々が並べられてる。
そりゃもうとろっとろの肉の煮込みから、黄金色に焼かれたパイ、初めて見るような赤い果物のサラダまで。
一皿一皿、すっげ材料費と手間がかかってるだろって料理が十何皿も並んでる。
文句なしの食卓。問題はこれが朝食ってことなんだけど。
……いったいどうしちゃったの? ティナ。

うちの魔女は非常に寝起きが悪い。
だから朝食も、パンとスープは前の晩から用意されてて、作ってくれる時は、更にその他二皿が追加される感じなわけ。
それが基本なんだけど……何があったらこうなるんだ。毒とか入ってるだろ、実は。
「入ってませんよ」
「心を読むな!」
「顔に出てます、ってそれはどうでもいいですから。食べたらどうですか?」
ティナはそう言って、すっげいい匂いのする肉の皿を押しやってきた。
うっ、めちゃくちゃおいしそう。めちゃくちゃ食べたい。
でも何なの急にこの朝飯……。

俺は激しく理由を聞きたかったんだけど、これ以上しつこく聞いたら吹っ飛ばされそうだった!
だから仕方なく食べ始めたんだけど―――― やっぱすげえうまい! どこの国の料理なんだ、これ。
俺は黙々と皿の上の料理を消費していった。
ティナは自分が食べることもなく、向かいの席でじっとそれを見てる。
あと四皿、ってところで俺は聞いてみた。
「ティナ、食べないの?」
「いいです。全部貴方のですから」
「でも俺、もうお腹いっぱ……」
「貴方のですから」
……何だろな、これ。有無を言わせない迫力が怖い。
俺は反論を諦めると、残った皿に手を伸ばす。
うう、本当に腹いっぱいなんだけど。おいしいんだけど。何なんだ!
ティナ、据わった目で見てないで何とか言え!

うん。料理ってのはどんなにおいしくても量が膨大だときついものなんだな。
突然の朝食を乗り越えて、昼食と夕食にも同じ量の料理を出された俺は、何とかそれをたいらげると長椅子に転がる。
く、苦しい……死ぬかもしれない。
こんな理由で死ぬかもしれないって思ったのは初めてだぞ! 飢え死ぬかもって思ったことはあるけど!
そろそろ理由教えてくれてもいいだろ! ティナ!
―――― って、はっきり言えたら格好よかったんだろうけど、そんな力は残ってませんでした。
俺は震える手を挙げて、ティナに「理由おしえて……」と懇願する。
あいつは半分死んでる俺の隣まで来ると、冷たい目で俺を見下ろした。
「いえ、ちょっと貴方の身体速度が尋常じゃないなと思いまして。体重を増やしてみたらどうなるのかと」
「一応計算して絞ってあるんだよ! この体!」
「じゃ、手合わせお願いしていいですか?」
「今動いたら吐くわ! 何考えてんだ、お前!」
こいつの思考回路はまじで分からんわ!
最近立て続けに放り投げたのが悪かったのか!? 軽いんだよ、お前!
横になって「ぐえー」って奇声を上げてる俺を、ティナは容赦なく麺棒でつっつく。
ともあれ、この一件で俺は、うまい料理もほどほどが一番と悟ったのだった!
あとティナが妙に優しく見える時は裏があるってこともな!