繋いだ指

mudan tensai genkin desu -yuki

彼ら二人が住む屋敷において、彼女が裸足で過ごしていることはよくあるが、彼が日中素足になることはまずない。
改めてそのことに気付いたティナーシャは、夫に纏わりついて合わせていた掌を離した。彼女にいいようにされながら本を読むオスカーを見上げる。
「足の大きさも比べてみたいです」
「何だ急に。俺の方が大きいぞ」
「気になるんですよ。貴方、寝る時かお風呂の時しか足下脱がないじゃないですか」
「……普通そうだろう」
ティナーシャが時折裸足で徘徊する原因の一つには、宙に浮いていることが多いからではないかと彼は疑っている。
その点、彼は普通に地に足のついた生活をしているのだ。まるでそれがおかしいことのように言われて、オスカーは白い眼になった。
「お前と一緒にするな。大体、靴だけ脱いでてもおかしいだろう」
「下も脱いでたら変態ですしね……」
「だからと言って上まで脱いでたら変態じゃないかと言ったら間違いなく変態だが、下だけの方がおかしいな」
「ちょっと裸足を勧めたいだけなのに、困った問題です」

そう決着したはいいものの、ティナーシャは暇を持て余しているのか、足の大きさを比べたくて仕方ないらしい。
風呂に入ろうと誘ってくるので、読書中のオスカーは「足だけ脱がせろ」とやる気なく指示した。
彼女は言われた通り、床に膝をつくと靴の紐をほどいていく。
やがて、夫の足を望み通りに素足にしたティナーシャは、対面に座ると自分の足の裏をそれにぺたりとあわせてみた。掌と同様、大人と子供くらいの違いがある足に、何が面白いのか歓声を上げる。
その声に、オスカーは本から顔を上げた。

湧き上がってきたのはちょっとした悪戯心だ。
彼は合わされていた足を一瞥すると、指先をひょいと曲げた。親指と人差し指で妻の足を挟む。
「あああああああああ! 痛いいいいいいい!」
「あ、悪い」
「なんですかその足の指! どれだけ力があるんですか!」
悲鳴を上げて空中に飛び上がったティナーシャは涙目だった。
そこまでするつもりはまったくなかったのだが、足の指で何かを掴むなどという経験がない為、加減が分からなかった。
オスカーは頭を掻くと、半泣きの妻を手招きする。
「やっぱり裸足じゃない方がいいな」
「貴方はそうみたいですね」
痛い目を見たティナーシャも、それで少しは懲りたらしい。
もう何処も比べることなく彼の隣に寄りかかると、欠伸を一つして転寝を始めたのだった。