破壊

mudan tensai genkin desu -yuki

結婚して嫁さんを家に迎えることになった。
これって言ってしまえばそれだけのことなんだけど、すごいことだよな! 少なくとも俺にとってはすごいこと!
だって自分が結婚できるとか思ってなかったもん。一人でひっそり生きて死ぬんだと思ってたもん!
これも、えーと、えーと、誰のおかげだ。みんな手伝ってくれたのと同じくらいは俺を陥れてた気がするぞ。
ともかく、そんな感じで今日から嫁さんと暮らすことになったのです!
ええもう徹底的に掃除しましたよ。昨日から。埃一つ残さない勢いで。
そしたらやって来たダイナ嬢が、家の中を見て回ってこう言いました。
「この壁の穴、どうしたんですか?」

わあああああ、忘れてたああああああああああ!!
壁に穴開いていることが日常になりすぎてて気づかなかった!
ってかティナ、そこは塞いでけよ! お前は私物綺麗に持ってく前にやることあるだろうがよ!
開ける時は一瞬、っていうか消失したのに、塞ぐのは大変なのか!?
口に出せない突っ込みを心の中で消化して、肩で息してるとダイナ嬢が心配してくれました。
「あの、聞いてはいけないことでした?」
「いえ、そんなことは全然ないです! どんどん聞いてください!」
「壁の穴は」
「気分転換で開けました!」
もう全然事実と違うけど気にしない! こういうこと何百回もやってる気もするけど気にしない!
俺の部屋の壁の穴は、上から板張ってその先は台所に繋がってるわけですが、それもきっと気分転換です。
決して料理作ってるティナが突然怒って壁ぶちぬいたとかそういうわけじゃない。
―――― 自分にそう言い聞かせていると、ダイナ嬢はにっこり笑ってくれました。
「そうなんですか」
「そうなんです」
「でもこのままだと、少し殺風景ですよね。いじっても構いませんか?」
「好きなようにやっちゃってください!」
板打ち付けてあるだけってさすがにひどいもんな。
新婚家庭の壁に板。うん、自分何言いたいのか分からなくなってきた。
けどまあそんな感じで、穴のことは奥さんに任せたわけですよ。
で、翌日仕事から帰って来たら、見事穴はなくなっていました!

「……おおお」
「お気に召しました?」
「おおお」
いや、待って。ちょっとどう反応したらいいのか分からない。
だってあれですよ。帰ったら穴なくなってるんだよ。っていうか実際なくなってるのは壁なんだけど!
「これはどうやって……」
「職人さんたちに来てもらって、壁を切り出してもらいました。この方がすっきりしてますでしょう?」
「すっきり……してますね」
すっきりしすぎててびっくり。っていうか俺の部屋が台所と一体化した。台所になった。すごい気分転換。
なんか切り出された後には柱に花とか飾られているけど、もうその辺とかは流そうかっていうくらいです。
返事に困った俺はダイナ嬢を見る。
……う、なんかにこにこして見つめられてる! 上手い反応を返さないと!
「こ、これで食べてすぐ寝れます! ありがとうございます!」
うん。自分で言ってちょっといまいちだと思った。でも他に返せない。どうすればいいの。ティナなんとかしろほんと。

けどそうやって悶絶している俺に、ダイナ嬢は不思議そうな顔で言ったわけで。
「あら。でも寝室は一緒になるのですから、別の部屋になるんじゃないですか?」
「!!!!!」
え、なにこれ。夢? 夢なの? 俺の頭に穴開いてるの?
いやちょっと感想出てこない。何も考えられない……。



そんな感じでぼーっとしているうちに、奥さんに色々言われたらしいんだけど、さっぱり頭に入ってませんでした。
翌日もう一枚壁がなくなってたんだけど……家崩れたりしないよな。多分。