致死量

mudan tensai genkin desu -yuki

俺の仕える城はどうもちょーっと変わっていて、たまに変わったことをやらされたりする。
その一つが武官や兵士を対象とした登山訓練なんだけど……登山訓練って建前だろ、これ。
何かどう考えてもキノコ採り大会だったんだけど! 皆で山中で散開してひたすらキノコ探してたぞ!
そんなわけで布袋いっぱいにキノコを詰め込んだ俺は、納得出来ない気分を味わいつつ帰宅したわけですよ。
で、ちょうど夕飯の下ごしらえしてたティナに袋ごとキノコを渡した。
「……何ですか、これ」
「キノコ。採ってきたから」
「ええ? 訓練脱走してきたんですか?」
「ちゃんとやったからキノコだらけなんだよ!」
その辺は俺も不思議に思ってるんだからあんまり突っ込むな!
でもこれ毎年の恒例らしくて、みんなノリノリでキノコ採ってたからな! 俺だけ採らないわけにもいかないだろ!
ティナはまだ嫌そうな顔で袋の中を覗き込んでる。喜ばれるとは思ってなかったけど、もうちょっと喜べ。
「とにかくそれ、料理に使っといて」
「いいんですか?」
「いいよ」
何でそんなこと聞くんだ。変な奴だな。
ともかく俺はちょっと汗流してくるから後よろしく! 
ティナは料理の腕はあるからな。任せた方が早い。
―――― そう思ってたらえらいことになりました。



テーブルの上には美味そうな匂いの皿がぎっしりと並べられてた。
相変わらず手際いいな。どれにもキノコが入ってるみたいだけど、さすがですよティナさん。
配膳をしてたあいつは俺が来たのに気づくと、軽く指を弾いた。とたんに濡れてた髪が爆発する。
いや、乾かしてくれたんだろうけど、もっと普通に乾かせないのか? お前が乾かすと俺の頭ふくらんでキノコみたいになるんだけど!
けどそんなことあいつが忙しい時に言うと、俺の頭自体が破裂させられかねないからな。とりあえず夕飯食べて後片付けしてからで……。
と思って椅子に座ったら、あいつはかるーく注意してきた。
「毒っぽいキノコが混ざってるんで一応注意してくださいね」
「なんだそれ!」
「貴方が持って帰ってきたんじゃないですか。料理に使えって」
「毒キノコまで使えとは言ってない!」
「と、言われても。私もさすがに毒か毒じゃないかなんて見ただけじゃ分かりませんし。適当に入れたんで、用心しながら食べてみてください」
「食べてみてください、じゃないだろ!」
なんで毒っぽいもの食わすんだお前! おかしいだろ! そこはよけろよ! 持って帰ってきたの俺だけどな!
しかも注意して目の前の皿みたら紫のキノコとか浮いてるし! え、俺こんなの採ったっけ……。
よけちゃ駄目なのか? ちょっとつついてみたらなんか、ぶよん、って感じがする。
―――― あー、でもまぁ、何かあったら魔法で治療してもらえるんだろうしな。採取責任者として食べるか。
ティナは向かいでお茶を啜りながら付け加えた。
「ちなみに自然の毒って魔法で解毒出来なかったりするんで気をつけてください」
「先に言え! なんでそんな危ない橋渡らせようとするんだ!」
「貴方が『ちゃんとやった』と自信満々に袋を渡してくるので」
「行き違いがあった!」
自信があったのは、訓練がキノコ狩りだったことについてです。キノコの中身に自信はない!

でも、なぁ……そう言ってもやっぱこの現状、俺が原因なんだよな? ティナは言われた通りやってくれただけだし。
ここはやっぱり俺が毒見をしなきゃ駄目なのかもしれない。ううっ、本当に毒が混ざってたらどうしよう。恨むぞこの国。
とりあえず浮いているキノコごとスープを匙に掬ってみる。
まずはスープだけ一口。―――― あ、美味い。そりゃティナの味付けだもんな。
じゃあいよいよ紫のキノコを……

………………
…………
……
「どうですか?」
うん、言葉にならない。ぬめっとしておる。



結論から言うと、毒キノコはなかった。
ちょっと気持ち悪くなったりぴりぴりするのはあったけど、量的に大丈夫だったらしい。
命に別状はなかったけど、来年はもうキノコ狩りはしないからな!
そう誓う俺に、けどティナは「貴方皆に遊ばれてるんじゃないですか」と水を差してきた。ひどい。