謎解き

mudan tensai genkin desu -yuki

「それで、これどうすりゃいいわけ?」
「俺に聞くな」
その情景は、仕事を請けた当のケグスとしても不可解なものだ。
がらんとした部屋の中にある大きなテーブル。その上にはいくつものグラスや本が乱雑に置かれているだけだった。
しかもそれらはがっつりと何かで固定されていて、動かせないようになっている。
「この屋敷を根城としている殺人者を捕らえるか殺害するかして欲しい」と依頼されてきた二人は、当の標的が見つからないことに半ば途方に暮れかけていた。
師についてきたアージェが、ページを開いたまま固定されている本を叩く。
「他の部屋も空っぽだったもんな。で、この部屋は意味不明。これもう逃げられただろ」
「いや、さっきこの家に入るまで見張ってただろ。で、表と裏から入ったんだからまだ中にいるはずだ」
「でもいない」
「今考えてる」
可能性としては、隠し部屋か隠し通路があるというものだ。
それを考えて他の部屋も確認してきたのだが、この部屋が広さ的に一番怪しい。
ケグスもそう思って壁や床をあちこち見てきたのだが、どこかが開くような仕掛けは見つからなかった。
固定された本を捲ろうとしていたアージェが、顔を上げる。
「もうとりあえず大槌とか持って来てさ、壁とか床とか壊してみるとか」
「アホか、お前。取りに行ってる間に逃げられるだろ」
色々複雑な事情を持って彼の弟子になったこの青年は、色々複雑な事情のせいで、一周回って図太い性格になってしまったようだ。
それに関してはケグスに責任はないと思うのだが、たまに責任を感じることもある。
彼は多くの苦言を飲み込むと、「とりあえずもうちょっと調べろ」と指示した。
二人はもう一度部屋の中を探し回る。
そうしているうちに、ケグスは壁に飾られているレリーフに気づいた。
大きな額縁に収められているレリーフは、長テーブルの上の食卓を彫り上げたもので、触れてみると部分が僅かながら動かせるようだ。
ケグスは、テーブルの下を調べている弟子を振り返る。
「見つけたぞ。これが仕掛けだ」
「お、じゃあそれを破壊すればいいか」
「お前本当落ち着け」
面倒なことを考えたくないのは分かるが、それにしても酷い。
ケグスは自分の教育がどう間違っていたか、束の間しみじみと考えた。
考えたところでどうにもならないので、我に返るとテーブルに戻る。
「多分、なんかの謎解きだな。わざわざ固定してるってことは、これが鍵なんだろう」
「面倒くさいな。これだったらこの部屋にびっちり敵が詰まってる方がよかった」
「よくないだろ。いいから落ち着け」
一緒に仕事をする人間として、人選を間違った気もするが、この弟子の勝負強さは時にケグスを凌ぐほどなのだ。
少々のことは我慢して自分がやればいいだろう。ケグスはテーブルの上を調べて、レリーフにあるものと同一のものがないか確認していく。
その間アージェは、固定された本をまだ捲ろうとしていた。薄いナイフを取り出して頁の間に差し込もうとしている。
「無理だからやめろ」と言うべきかどうか、迷うのも面倒だった。


結局、本に描かれている描写の通りにレリーフを弄ったところ、魔法が発動して隠し扉が開いた。
開いたのだが時既に遅し、隠し部屋の中には敵の応援に駆けつけた者たちでびっちりと埋まっており―――― 不満の溜まっていた青年は、気のせいかいきいきと剣を振るうことになったのだった。
次からはもうちょっとちゃんと仕事を選ぼうと、ケグスは学んだ。