華美なる

mudan tensai genkin desu -yuki

夜のショーウィンドウは、一際華やかに浮き立って見える。
二人で買い物に出ての帰り道、百貨店のウィンドウの前で足を止めたフィリアを、宗平は数歩行きすぎてから気づいて振り返った。人の波に逆らって慌てて戻る。
「フィリア、何見てるんだよ」
「……あ、すまない」
少女がぼうっと見ていたのは、ショーウィンドウの一つに飾られた青いドレスだ。
深い海の底を思わせる青。サテンのスカートは前部分は膝丈だが、後ろは引きずる程に段をつけて長い。
首回りは立襟になっており、細い袖も含めて何処もかしこ上品で鋭角なラインを描いていた。
―――― こんなところに飾ってあるということは、高価なブランド品だろう。
とてもではないが学生に買えるようなものではない。フィリアの様子を見るだに心惹かれているようだが、だからといってどうすることも出来なかった。
世間知らずな魔女に、どう説明しようか宗平は頭を掻く。
しかし意外に敏いフィリアは彼の言わんとするところを雰囲気で感じ取ったようだ。すぐに慌てて彼の隣に戻った。
「こっちには色んな服があるのだな」
「あー、ああいうのはあんま着てくとこないけどな。魔法島の方が違和感ないかもな」
異世界人たちの血を引く魔法島の住人は、服装からして種々雑多だ。
こちらの世界と大差ない格好をしている人間もいれば、あからさまに民族衣装らしきものを着ている人間もいる。
フィリアも、値段とシチュエーションさえなんとか出来るなら、非現実めいたドレスが似あうだろう。
非常に美しい容姿をしている人外の少女を連れているせいで、行きかう人々から注目を浴びている宗平は、理由の分からぬ気まずさを感じながら彼女を手招いた。
二人は買いだした紙袋を手に、また夜の雑踏を歩き出す。



「宗平、宗平! ちょっと見てくれ!」
興奮ぎみのフィリアに、部屋のドアを叩かれたのはその日帰ってから一時間ほどしてのことだ。
目に映るもの何もかもが新鮮な魔女の、こういったはしゃぎぷりに慣れている少年は、のんびりと腰を上げる。
「ほいほい。どうした」
「見て見て。作ってみたのだ」
「…………お」
ドアを開けた先に立っていた魔女は、一般家庭の廊下にはまったく似合わないドレス姿だった。
先程見たものを、自分の力で再現したのだろう。後ろの裾は若干短いが、きちんと段が作られており―――― その分腰まであったフィリアの青い髪は、ショートカットになっていた。
「お、うおお……すごいな。髪を変えて作ったのか!」
「そうなのだ! ちゃんと出来ているか?」
「出来てる。似合ってる。素直にすごい。美羽たちが見たら喜びそう」
「なら見せてくるのだ!」
意気揚々とドレスの裾を引いて廊下を駆けだす魔女は、外見とは裏腹に子供のようだ。
その姿を苦笑して見送った宗平は、先程の気まずさがなくなっていることに気づくと笑って机に戻る。



一時間後、ドレスを消して髪を戻したフィリアは、髪の半分が元の白色に戻っていることに気づいてショックを受けていた。
何事にも代償というものはあるらしい。