ニケ君を動かせ! 16

禁転載

ニケ君への助言は「何となく落ち着かないから後衛で手伝う。」で決定しました!
―――― それではニケ君の何気ない人付き合いのよさをお楽しみ下さい。



「これでもう充分」と言外に言われても、まさか魔物の群れを前に何処か抜けた女を置き去りにするわけにはいかない。
ニケは旅行先にこの町を選んでしまった自分の不運を呪いつつ、短い詠唱を加え構成を作り上げた。断続的に飛びかかってくる魔物を防ぐ為、サイラと自分の周囲に結界を張る。
次の瞬間、不可視の結界にへばりついた半透明の魔物を見て、サイラは感嘆の声を上げた。
「あなた、凄い魔法士なんですね。構成に隙がありません」
「いいからさっさと斬っていけ」
物理攻撃は対象外とし、魔力を帯びたものだけを食い止めるように組んだ結界は、その表面にどんどん魔物を積み重ねつつある。
サイラは魔法武器である斧を左手に持ちかえると、右手にただの短剣を抜いた。結界越しに粘液質の魔物を切り裂いていく。
切り裂かれたものはその後もびくびくと動いていたが、再び飛び上がるほどの力は残っていないらしい。自重で床の上に滑り落ちていくと床にたまり始めた。見る間に気色の悪い色になっていく浴場の石畳をニケはげっそりした顔で眺める。
「下を焼くぞ」
「お願いします」
結界を維持したままニケは、半透明の魔物が溜まる床上目掛けて火を放った。魔法で生み出した炎の舌は床ごとそれらをあぶり、たちまち赤い粘液は脂が溶け出すような音を立て焼け焦げていく。
その間にもサイラは黙々と魔物を切り落としており、「撲滅」はもはや作業のごとく分担によって手際よく進んでいった。
やがて二、三分も経った頃、新しく飛びかかってくる魔物もいなくなる。

「終わったのか?」
後衛に徹していたニケからは、浴槽の奥まで見通すことはできない。
その為、前にいるサイラに尋ねたのだが、彼女は無言で首を傾ぐと結界の外へ踏み出した。浴槽の縁に立ち中を覗き込む。
「おい、あまり乗り出すな」
まだ何かが残っているかもしれない。そう思ってニケはいささかやる気なく注意をしたのだが、その用心は直後確信に変わった。
構成の生まれる気配。彼は手を伸ばすとサイラの肩を引く。
「下がれ!」

お湯の中にはまだ魔物たちが残っていた。
そしてそれらは半分以上が焼き殺されたことを感じ取ったのか、一つに集まり魔法構成を作り出したのだ。
浴槽の中に広がる円形の構成。その意味をほぼ同時に読み取った二人は、失踪事件の原因を理解する。
サイラは身を捩って男の手の中から肩を外すと、晴れやかな声を上げた。
「ありがとうございます。では、後ほど」
―――― 止める間もない。
女は躊躇いもなく石床を蹴ると、浴槽の中に飛び込んだ。魔物たちが作り上げた転移門の中に消える。
その後を追いかけて湯船の縁に立ったニケは、すぐに消えるであろう転移門を見下ろして舌打した。


―――― さて第三ターン、ニケ君のコマンドをお選び下さい。