ニケ君を動かせ! 02

禁転載

ニケ君への助言は「食事に行こうと誘う」で決定しました!
―――― それでは皆様、彼の奮闘ぷりをお楽しみ下さい。



「お前、この後暇なら何か奢ってやろうか?」
「え。何で怒られるの? 私何かした?」
「違うわ!」
相変わらず伝わらない話に心が折れそうになる。が、ニケは奥歯を噛み締めて憤懣を飲み込むとゆっくりと言い直した。
つまり「食事にでも行かないか」と。
それでようやく理解したらしい雫は菓子袋を持ち直すと大きく頷く。
「あ、ご飯か。お腹すいているの? これ、あげるよ」
「……違う」
「何々。むずかしいよ」
難しいのはお前だ、と言いたい気持ちを彼はすんでで飲み込んだ。
どうすれば真意が伝わるのか、察しの悪い相手を前に思い切り顔を顰める。
しかし彼の葛藤などまったく気づいていない雫は、しばらく悩んだ後、はっと顔を上げた。
「わかった! 女の子と一緒にいかないと入りづらい店に入りたいんだ!」
「あー……お前の頭の中は本当にどうなっているんだ?」
どうしてそうなるのか分からないが、もう色々と面倒くさい。
ニケは「そうかもしれんな」と適当に返事をすると、女王の許可を取って雫を執務室へ押し込んだのだった。

―――― そして三時間後。
誤解を解く努力を怠った彼は、雫に連れられ城都にある小さな店を訪れていた。
「こういうところがいいんでしょ!」と彼女が自信を持って力説する、客も店員もやたら若い娘しかいない可愛らしい内装の店に。
人形が並べられているテーブルの上、品書に意味の分からない菓子の名前らしきものが並んでいるのを一瞥して、ニケは心の底から脱力する。
「……俺は、お前といる時ほど色々な自信がなくなる時はない」
「あ、ニケ。これにしなよ。『うさぎのメキメキ脳天ケーキ』」
「そんな名前の菓子があるか! それは『うさぎのめるめる耳付きケーキ』と書かれている!」
一体何が「めるめる」なのか。キスク宮廷でも一、二を争う実力の魔法士は、背中につきささるくすくす笑いと聞き耳を立てられている気配に内心悶絶しながら、結局は言いたいことの十分の一も言えず食事を終えたのだった。非常に疲労した。

「めるめるケーキ」に胸焼けを覚えながら店を出たニケは、何度も溜息をついて倦怠感を押し殺してしまうと隣の女を見た。
雫は久しぶりの城都が気になるのかきょろきょろとあちこちを見回している。誰かにぶつかりそうで危なっかしいその姿に彼は舌打ちした。
「ちゃんと前を見て歩け」と注意する。



―――― さて、この後ニケ君はどうしたらいいでしょう。