ニケ君を動かせ! 04

禁転載

ニケ君への助言は「もうちょっと頑張るんじゃ!」で決定しました。
―――― それではニケ君の転がりっぷりをご堪能下さい。



宮廷の何処かにはファルサスの密偵がいる。
その密偵に気取られるようなことをしては、今度こそ命に関わってくるだろう。
何故こんな事態になってしまっているのか。後のない思いにさすがに激しい疲労感を拭えない。
だが、だからと言って他国の王族に私事を制限される不条理さを、諾々と受け入れられるほど彼は素直でもなかった。
キスクの城に戻り、人気のない奥の廊下で壁に寄りかかりながら、ニケは苦い声を洩らす。
「次に来るのは……いつだと言っていたか?」
「来週来られるって言ってましたよう」
「そうか」
何処からか掛けられた声。
それに反射で返事をした彼は、次の瞬間ぎょっと異常に気付くと、声とは反対方向に飛びのいた。目を丸くしている女官姿の少女を睨む。
あどけなさが色濃く残る彼女は見覚えのある人間の一人だった。ただ名前が思い出せない。確か雫とよく一緒にいた――――
「名前は何だ」
「ウィレットです」
そう言えばそんな名前だった。
かつて彼女の腕を捻り上げたこともあるニケは幾許かの気まずさを感じたが、少女の方は覚えていないのかまったく気にしていないらしい。小首を傾げながら聞き返す。
「あの、ヴィヴィアさんのことですよね? 来週来られるそうですよ」
「……何故あいつのことだと思うんだ」
「違うんですか? てっきりそうだと思っていて……ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げるウィレットは少女特有の何を考えているか分からない面持ちである。
ニケは色々理由が絡み合って肯定も否定もしづらく―――― 結局はまったく違うことを口にした。
「出身は?」
「え。ヴィヴィアさんのですか? すみません、知りません」
「違う。お前の出身だ」
「城都です」 
「今までの経歴を簡潔に」
「城都で生まれ育ちました。行儀見習いとして城に入っています」
「分かった」
ユーラと一緒にいたということは、彼女が密偵だと判明した時にこの少女にも調査が入ったであろう。
ファルサスの密偵ではないとあたりをつけるとニケは再び壁に寄りかかった。何とはなしに天井を見上げる。



―――― さて、ニケ君の第二ラウンドはどう攻めるのがいいでしょうか。