慰めを謳う のおまけ

mudan tensai genkin desu -yuki

「ねぇ、あなたは誰?」
テネステーゼが無邪気に問うた時、むしろ慌てたのは彼女の父の方だった。
王である父は慌てて「無礼をお詫びしろ」と言うと、自分より遥かに若い男に向かって頭を下げる。
だが若い男は苦笑しただけですぐに手振りで問題ないと示した。目を通していた書類に二、三注意点を書き込むとそれを王に返す。
彼は壁際の椅子に座るテネステーゼを振り返った。
「さて誰だろうな? 誰だと思う?」
「精霊がいるんだから、王族の魔法士なのでしょう?」
「残念。はずれだ」
そこで椅子に座るテネステーゼに砂糖菓子をくれたのは、彼の精霊である男の方だった。彼女は目を輝かせて白い菓子に手を伸ばす。
だが、はずれと言われたまま正解が分からないのも気になる。菓子くらいでは誤魔化されないぞと彼女は男を睨んだ。
「教えて欲しいわ。あなたは誰なの?」
「黙っていなさい、テネステーゼ」
「別にいい。もう会うこともないだろうからな」
男は大きな手で彼女の頭を撫でる。その手の温かさに彼女は気恥ずかしくなって俯いた。優しい声が響く。
「お前は少しティナーシャに似ているな。きっと美人になる」
「そう、かしら」
「ああ」
ティナーシャという名が誰を指しているのかは分からなかったが、テネステーゼは嬉しくなって微笑んだ。青い瞳の男を見上げる。
「ねぇ、もう会えないの?」
「ああ。もう来ない」
「どうして?」
男はその質問には答えなかった。彼女の頭をくしゃくしゃと撫でて部屋を出て行く。

後日彼女はどうしても気になって奥の庭にある精霊の像を見に行った。
自分や姉、叔母が使役する四体を除いて全てが揃っている石像。
八体の像を見回したテネステーゼはその中に砂糖菓子をくれた精霊の像を見つけて、本当に彼にはもう会えないのだと、ようやくその時理解したのである。