鳥籠の女 のおまけ

mudan tensai genkin desu -yuki

本を読みながら湯船に浸かっていた魔女が、顔を上げて背後を見上げたのは友人の悲鳴が聞こえた為である。
ティナーシャは、滑って転んで尻餅を打っているシルヴィアを驚いて見やった。
「大丈夫ですか?」
「へ、平気です……」
つい先程まで魔女の髪を洗っていた彼女は、何とか立ち上がったものの、服はすっかりびしょぬれになってしまっている。
「着替えてきます」と頭を下げるシルヴィアに、ティナーシャは軽く声をかけた。
「一緒に入ればいいじゃないですか。その間に服乾かしますよ」
「そ、それはありがたいお言葉、ですが、私、その」
「どうかしましたか」
「あんまり他の人に裸を見せるの、慣れてなくて……」
「ああ」
友人が言わんとするところを理解した魔女は、彼女を手招く。
そうして手を伸ばして着た状態のまま服を乾かしてやると「はい、終わり」と笑った。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
「そういえばティナーシャ様って、私たちに裸見られるの嫌がりませんでしたよね。
 やっぱりそういう暮らしをなさってたんですか」
「あー」
この大陸において、上流階級の女は女官や侍女に体を洗わせることが多い。
シルヴィアは暗にティナーシャの出自を指してそう言ったのだろうが、実際は少し異なっていた。
魔女は本を宙に浮かせてしまうと顎に指をかける。
「いえ、長く生きてるとそういうことに拘ってられない時ってのがありましてね。自然と慣れました」
「……どういう時なんですか」
「戦闘中着衣に構ってられない時とか」
「…………」
予想通りの答にシルヴィアは何とも言えない表情になる。
それを放置して魔女は笑った。
「まぁ基本は男に見せると腹が立つんで見せませんが、他に優先することがあるならどうでもいいですね。
 後で吹き飛ばせば気も済みます」
「そこは気になさってください……」
友人の苦言に、魔女は肩を竦めると再び本を手に取る。
十数分後、ちょうど浴室から出た時に遊びに来たオスカーは、裸の魔女に室外へ蹴り出された。