鳥籠のプラスマイナス

mudan tensai genkin desu -yuki

永遠を前提に付き合う恋人が人間ではなかった。
と、事実を文章にしてみると意味が分からないことになった。
アルファスは書類を置くと、差し出されたお茶のカップを受け取る。盆を持ったまま微笑んでいる女を見上げた。
何となく彼は、色々とストレスが溜まる紆余曲折を経て付き合ってから、一通り知ることになった相手の情報を整理してみる。

まず、容姿は文句のつけようがない。
人にはそれぞれ女性の外見への好みがあるだろうが、彼女の姿形は彼の好みに添っている。
少女だった頃は、綺麗だが忌まわしく見えていたティナーシャも、大人の姿になった後は、見るとつい触りたくなる。
アルファスはお茶のカップをサイドテーブルに置くと、女を手招いてみた。
ティナーシャは嬉しそうに膝の上に乗ってくる。

料理をはじめとする家事全般は問題ない。
一体どういう生き方をしてきたら、浮世離れした雰囲気の彼女がここまで所帯じみたスキルを身につけているのかとも思うが、永く生きているのだから身につける時間がありあまっていたのだろう。
出される料理は変わった味付けのこともあったが、それはそういうものとして充分美味しかった。この辺は多分育ってきた環境の違いだと思われる。

性格は、べたべたで気紛れだ。
以前はつかみ所のなさが八割を占めていた彼女だが、今は甘ったれのべったりが六割ほどを占めている。
彼のことが好きで好きで仕方ないらしい。よく懐いている。
その代わり、彼が目を放すといつも通りである。こないだは路上で絡んできた人間を真顔で蹴り飛ばしていた。
あと思いつきで変なことを始めたりもするが、報告連絡相談を徹底するよう教育しておいた。
―――― 千年以上もの間、自分がその教育をしていなかったのか、とかは怖いから考えない。

欠点としては、寝起きは悪い。
朝はまずきちんと起きられない。風呂に入れて一時間ほど解凍しなければならない。
これはこれで面倒くさい。が、あらかじめ活動時間を指定しておけば、何とか頑張って起きようとはしている。
あとは短気だ。生来の性格らしいが、気をつけてもらいたい。

しかし実のところ、問題はそれくらいである。
閨房でも時々物を壊すくらいで、不満はない。むしろ(以下省略)
昔の自分は彼女をどのように扱っていたのか少し気になるが、ぎりぎりを試してみたら嫌がられそうである。

「……つまり、俺は幸運なのか?」
「何がですか?」
ティナーシャは不思議そうに首を傾げる。
ほぼ理想通りと言っていい伴侶。だが、そのようなことは口にしない。
彼はこれらの条件と、マイナス要素になっている逸脱を頭の中で天秤にかけてみた。
考えながら白い肢を触ると「くすぐったい!」と逃げられる。
「まぁ……総合プラスだな」
「だから何がですかって」
口元を曲げた彼女は、手招くと懲りずに膝の上に乗ってきた。
そうして幸せそうに目を閉じて寄りかかってくる恋人に、アルファスは苦笑すると再びお茶のカップを手に取ったのである。